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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)98号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 取消事由(1)について

1 当事者間に争いのない第一引用例の記載内容及び成立に争いのない甲第四号証(第一引用例)によれば、第一引用例には、壁体7にステンレス製外枠2を埋設固着し、これに窓枠本体1、即ち障子を取付けてこれを支持、案内する枠体(以下、本願発明及び各引用例を通じ、単に「窓枠」というときはこの構成のものを指す。)をパツキン8を介して取外し自在に嵌込み、右外枠2と窓枠1とをネジ9、9´により固着した窓枠構造物が記載されていること、窓枠1が腐朽又は型式変更等のため(以下、本願発明及び各引用例を通じ、かかる窓枠を「旧窓枠」という。)、これに代えて新たな窓枠を設置する必要が生じた場合において、外枠2から旧窓枠を取外し、代りに右同様の方法により、外枠2を捨て枠(窓枠を挿入し固定するための開口部を形成する框)として新窓枠を嵌込み、両者を固着する方法が記載されていることが認められる。

2 これに対し、成立に争いのない甲第二、第三号証(本願の出願当初の明細書及び昭和五六年一一月一六日付手続補正書)によれば、本願発明の右明細書及び補正書には、前記のように新窓枠を設置する必要がある場合、旧窓枠1を取外することなく、その内周部に新窓枠4を固着する方法によることが記載されていることが認められる。そして、右甲第二、第三号証によるも、本願発明において旧窓枠と壁体との固着態様を限定する記載は認められないから、その態様として、両者を直接ビス等により固着する場合と、第一引用例のように壁体に埋設された外枠(捨て枠)を介して旧窓枠を壁体に固着する場合とを含むと解されるが、そのいずれであつても、新窓枠を設置するに当つて、本願発明では右のような旧窓枠に固着する方法が採られるものと認めるのが相当である。原告は、本願発明は捨て枠のある窓枠の改装を対象とするものではない旨主張するが、そのように解すべき根拠はない。

3 ところで、第一引用例の外枠2は、窓枠1を建物へ取付けるためのもので、前掲甲第四号証によるも、それ以外の目的に使用されるものとは認められないから、窓枠1と別体に構成されているとはいえ、これとともに窓枠構造物の一構成要素をなしているものということができる。

これに対し、本願発明において、外枠のある窓枠構造体にあつては、右同様の構成ということができるが、外枠のない窓枠構造体にあつては、窓枠のうち壁体(建物)への埋設部分は外枠としての機能を果たしているものといえるから、引用例の外枠2に相当する部分と窓枠が不可分のものとして、一体的に構成されているものということができる。

そして、本願発明において、前記2の方法により旧窓枠1に代えて新窓枠4を設置する場合、いずれの窓枠構造体においても、旧窓枠1(外枠のある窓枠構造体においては外枠とともに)が建物に固定されたまま残存し、新窓枠4を建物に固定する機能だけを有する捨て枠となるものと認めることができる。

そうであれば、新窓枠設置の際、後記のように、老朽化に対応した固着方法に差異はあるとしても、捨て枠としての機能を果たす点において、第一引用例の外枠2は本願発明の旧窓枠1に相当するものと認めて差支えないものというべきであるから、両者の一致点に関する審決の判断に誤りはない。

4 原告は、前記1及び2に述べたように、新窓枠設置に当たり、第一引用例においては旧窓枠を取外し、本願発明においてはこれを残存させることから、前者は取替窓枠取付けであり、後者は改装窓枠取付けであつて、両者は技術思想を異にする旨主張するが、取替といい改装といい、旧窓枠に代えて新窓枠を設置するという点においては同じであり、新窓枠設置の際、第一引用例の外枠2と本願発明の旧窓枠1とはその果たす機能において変りがないことは、前記3において述べたとおりである。

その他の原告の主張は、要するに新窓枠が設置される以前の第一引用例の外枠2と本願発明の旧窓枠1とを対比していることに帰し、いずれも、両者が新窓枠設置の際に捨て枠としての機能を有することを否定する根拠とはなり得ないものというべきである。

三 取消事由(2)について

1 本願発明が新上枠主体4(新窓枠のうち上枠部分)をその外周部に装着したアンカー5を介して旧上枠主体1a(旧窓枠のうち上枠部分)の内周部に連結固着しているのに対し、第一引用例では新上枠主体をパツキン8を介して旧上枠主体(外枠2のうち窓枠の上枠部分を嵌込む部分)の内周部に連結固着している点において、両者が相違していることは当事者間に争いがない。

審決は、第一引用例においてパツキン8をもつて外枠2と窓枠1との連結固着手段と認定している如くみられないではないが、前記二1に認定したように、第一引用例においては、外枠2にパツキン8を介してネジ9、9´により窓枠1を連結固着する手段が示されているから、右の連結固着手段に関する本願発明と第一引用例の対比は正確性を欠くものというほかない。そこで、以下においては、パツキン8を介したネジ9、9´を第一引用例の外枠2と窓枠1との固着連結手段として対比検討することとする。

当事者間に争いのない第二引用例の記載内容、前掲甲第二、第三号証及び成立に争いのない甲第五号証(第二引用例)によれば、第二引用例には、窓枠1に帯鉄4を固着し、これをコンクリート壁窓穴2の上下右左に植込まれた任意数の鉄杆3に取付けることにより、窓枠1を建物に固着したものが記載されていること、右帯鉄4が本願発明のアンカー5に、鉄杆3が第一引用例の外枠2にそれぞれ相当するものであることが認められる。

しかして、第一引用例の外枠2が本願発明の旧窓枠1に相当することは前記二3に述べたとおりであるから、新窓枠のうち上枠部分の旧窓枠又は外枠に対する連結固着手段についての前記相違点につき、第二引用例の帯鉄4に相当するアンカーを、第一引用例のパツキン8、ネジ9、9´に代え、本願発明のように構成することは、当業者が適宜容易になし得る技術的手段であるというべきである。

2 原告は、本願発明と第二引用例は技術分野を異にする旨主張するが、ともに窓枠の取付装置に関する技術である以上、両者は共通の技術分野に属するものというべきであるから、右主張は理由がない。

3 以上のとおりであるから、この点に関する審決の判断は結論において誤りであるとはいえない。

四 取消事由(3)について

1 本願発明が旧下枠主体1b(旧窓枠のうち下枠部分)に固着された支持部材3を介して新窓枠主体4を旧窓枠主体に取付けてなり、該支持部材3は、新下枠主体4a(新窓枠のうち下枠部分)を下方より支持する部分3aと、新下枠主体4aの室内方向横方向移動を規制する部分3bとを備え、更に新下枠主体4aと支持部材3を連結する固着手段を設けているのに対し、第一引用例は旧窓枠に相当する外枠2の下枠主体にパツキン8を介して新下枠主体を連結固着している点において、両者が相違していることは当事者間に争いがない。以下においては前記1同様パツキン8を介したネジ9、9´を第一引用例の外枠2と窓枠1との固着手段として対比検討することとする。

当事者間に争いのない第三引用例の記載内容及び成立に争いのない甲第六号証(第三引用例)によれば、第三引用例には、開口部基台に取付金具5により固定された取付板1とサツシ(窓枠)下枠4に固着された取付ピース2からなる取付部材を備え、該取付部材は下枠4を下方より支持する部分、即ち取付ピース2の水平片2aと下枠の室内方向横向移動を規制する部分、即ち取付板1と取付ピース2の各垂下片1b、2bが添接した部分により形成されるサツシ取付装置が記載されていることが認められる。

そして、前掲甲第二、第三、第六号証により、本願発明と第三引用例を対比すると、第三引用例の開口部基台に取付金具5により取付けられ固定された取付板1と下枠4に固着された取付ピース2よりなる取付部材とが本願発明の取付部材6、ビス18、固着手段19等により旧下枠主体1bに固着された支持部材3に全体として対応し、前者の取付ピース2の水平板2aが後者の支持部材3の支持部分3aに、下枠主体を下方より支持する機能を有するものとして対応し、前者の取付板1と取付ピース2の各垂下片1b、2bが添接した部分が後者の支持部材3の規制部分3bに、下枠主体の室内方向横方向移動を規制する機能を有するものとして対応することが認められる。

しかして、第一引用例の外枠2が本願発明の旧窓枠1に相当することは前記二に述べたとおりであるから、新窓枠下枠部分の旧窓枠又は外枠に対する連結固着手段についての前記相違点につき、右認定の第三引用例の取付部材に相当する支持部材を第一引用例のパツキン8、ネジ9、9´に代え本願発明のように構成することは当業者が適宜に容易になし得る技術的手段であるというべきである。

2 原告は、第三引用例は新規な窓枠取付に関する技術であるとして、本願発明を示唆するものではない旨主張するが、ともに窓枠の取付装置に関する技術である以上右の主張は理由がないものというべきである。

3 以上のとおりであるから、この点に関する審決の判断は結論において誤りであるということはできない。

五 取消事由(4)について

既に述べたように、本願発明も第一引用例記載の考案も旧窓枠又は外枠を捨て枠として利用した新窓枠の取付装置に関する点において共通性を有する技術であり、前掲甲第三号証に本願発明の利点として記載されているハツリ作業の不要、工期の短縮、建造物利用による工事の続行という利点は、第一引用例記載の考案によつても得られることは明らかである。

また、前掲甲第三号証によれば、本願発明では、(イ)老朽化の少ない旧上枠主体1aへの新上枠主体4の取付けはアンカー5により簡便に固着し、(ロ)老朽化が進行し、かつ保形性の悪い旧下枠主体1bへの新下枠主体4aの取付けは、前記のように、新下枠主体4aを下方より支持する部分3aと新下枠主体4aの室内方向横向移動を規制する部分3bを備えている支持部材3により行うことによつて、耐振性、耐風性、耐モーメント性を備えるとの効果を得ることができることが認められるが、(イ)の取付方法については前記三のとおり第二引用例記載の考案が、(ロ)の取付方法については前記四のとおり、第三引用例記載の考案がそれぞれ示唆するところであり、その奏する効果も右各引用例以上のものと認めることはできない。

六 以上のとおり、その構成及び効果からみて本願発明が第一ないし第三引用例記載の各考案から容易に推考し得たとの審決の判断は正当である。

七 よつて、原告主張の取消事由は全部理由がないから、原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

建造物に残存された旧窓枠主体に新窓枠主体を嵌め入れ、両枠主体を相互に連結固着してなる改装窓枠において;新旧両枠主体の上枠部分にあつては、新上枠主体をその外周部に装着したアンカーを介して旧上枠主体の内周部に連結固着し、このアンカーを介して新窓枠主体を旧窓枠主体に取付けて成り;

新旧両枠主体の下枠部分にあつては、旧下枠主体に固着された支持部材を介して新窓枠主体を旧窓枠主体に取付けて成り、該支持部材は、新下枠主体を下方より支持する部分と、新下枠主体の室内方向横向移動を規制する部分とを備え、更に新下枠主体と支持部材を連結する固着手段を設けて成る;

改装窓枠取付構造(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

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